雑記

ゲームの記事はネタバレを含みますのでご注意ください。

第三の目とは何であったのか

最初に書いておくと第三の目が何だったのか結論は出ていない。タイトル詐欺ですまない。前回の記事と揃えようかなって…。
まだ情報を整理中なのだが、メモしておく。

真実シークエンスで明示される通り、LorenzoとRenateは架空の人物だ。いずれもRenzo Neroが死の直前に制作しようとしていたフィクション映画『第三の目』の登場人物である。
正確には、おそらく画家Renate Schlzwaldは実在の人物だが、彼女をモチーフとした物語「芸術家である男爵夫人が奇術師を屋敷に迎え、異次元の迷路を探索する」はRenzoの創作。
このゲームのクリア目的である「真実」は、あくまでも現実の51年前に起きたRenzo死亡事件の詳細。
ゲームの舞台はLoreleiの記憶の中のHotel Letztez Jahrであり、不可思議な現象も起こるが、すべて精神世界でのこと。
Loreleiの記憶がRenzoの描いた物語の内容に引きずられただけ。全てはRenzoの創作設定。
…本当に?

ゲーム中で語られる非現実的な物語にはいくつかのバージョンが存在する。
Renzoの『第三の目』の脚本、図書室プロトタイプに点在する書籍、図書室プロトタイプのバグで迷路頭が捲し立てる話、Teatro Rossoでフクロウ娘が教えてくれる伝説。
これら全てがRenzoの創った物語のバージョン差分なのだろうか。その可能性も十分にある。Loreleiは生前のRenzoから色々聞かされていて、それが記憶に残っており、ゲーム世界に反映された、のかもしれない。
だが、そうではない可能性もあるのでは?Renzoの創作より前に、もっと大きな物語があって、Renzoもまたその登場人物にすぎないという可能性。Renzoは『第三の目』を創作したのではなく書かされたのだという可能性が。

これらの物語に出てくる要素についてメモ書きだけしておく。見落としはまだあるかもしれない。

迷路頭

ゲーム内の事実

赤の迷路に入ると出現するようになる。ダークスーツにネクタイ姿(Renzoと同じ)で、頭の部分がピンクの迷路になっている。9分割された迷路のパーツそれぞれが頭になったものに、合計9回遭遇する。
ホテル内に出現してプレイヤーキャラクターをゆっくりと追いかけ、捕まると尋問される。
尋問室の壁に"BEFRAGUNGSRAUM"と書いてあり、プレイヤーキャラクターを「フロイライン」と呼ぶなど、ドイツ語文化圏(Lorelei, Renateと同じ)の要素もある。

尋問では、Loreleiが1963年の事件前の印象的なシーンについて正確に記憶しているかどうかを確認してくる。
正解するとRenzoに提出するべき脚本、おそらくは1963年に現実に起きたことを脚本形式に起こしたものを与えてくれる。この脚本はアイテム解説文によると、「見た目は紙のようだが、重さは数キログラムほどもある。」「与え手にとって個人的に思い入れの深い、いわくつきの品」。

図書室プロトタイプでは、銃を持った男(Renzo)がバグるとこの迷路頭になり、意味の掴みづらい話を早口で捲し立ててくる(かなり読みにくいスピードで勝手にセリフ送りされる)。その話の主語は「我々(We)」。
迷路にいる「向こう側の女」の言では「九つの恐ろしい自我」。

『第三の目』の脚本ではRenateのことを「我が娘」と呼ぶ。

推測

Renateの父のようでいてそれだけではないような。もともと人間というわけではないように思う。
尋問の要素はおそらく1963年の事件でLoreleiに相対した警察官のイメージが入り込んでいるのだろう。
「迷路頭」がLoreleiの精神世界に登場するにあたって、尋問の恐怖の印象が融合したのかな、くらいに考えている。

この迷路頭、首から下は明らかにRenzoだし、出してくる脚本はRenzoも深く関わる過去の話なのだが、Renzoそのままではない。
Renzoに多重人格的に憑依している?とも考えられるのだが、後述の奇術師も赤い獣もみんなRenzoに取り憑いているといえば取り憑いている。
もしこれらが同根だとしても、全く同じものとは考えづらい。

彼らの行動については図書室プロトタイプのバグで展開される話を中心に考える。
「深みの卵」を盗み出し、イタリアの部屋に置いた。卵のために3つの種を探した。一つはただのフクロウの雛、一つはマジックをする被り物(おそらくシルクハット)。三つ目はレーザーの目を持つ女。

「卵」は登場回数が限られる概念だ。
赤い獣が第三の目のなかに(「そのうちに」が「第三の目のうちに」なのかは未確定)産み、数千年後に合いの子として生まれるもの。こっちは単数。
脚本の中で女優が語るセリフ、脳に産み付けられるアイディアの例え。複数形。

後者から「イタリアの部屋」がRenzo、というかRenzoの頭蓋のことではないかと考えている。「イタリアの部屋」は英語版ではItalian chamber、chamberは一定の目的のために区切られた空間であれば、議会場から銃の弾倉、心臓の房室まで指す単語だ。

迷路頭たちは第三の目と赤い獣の合いの子である「卵」を盗み出し、Renzoに授けた。アイデア、インスピレーションとして。
インスピレーションが作品に育つために、モチーフあるいはネタとなる「種」が必要だった。フクロウのヒナはRenate Schlzwald、被り物は古くから受け継がれる芸名Lorenzo the Great、そしてレーザーの目を持つ女、Lorelei Weiss。
これらを得て卵は満たされ、改めて「イタリアの部屋」に置かれる。卵が満たされたというからにはおそらくは孵化するのだろう。
そして生まれたのが映画『第三の目』の構想。ではないかな、と。

卵についてはこうして推測ができるのだが、肝心の迷路頭たちは何なのかはわからない。
「第三の目が瞬きし、我々は元の世界から連れ去られた」と言ってるので赤い獣と同一なのかなとも思った(第三の目の力で描かれた壁画で召喚された、的な)のだが、赤い獣はThe Red Beast、単数なのだ。
迷路は9分割され、迷路頭は9人いる。

卵のために動いているので、芸術vs商業という対立の中では芸術寄りにいるのではないかと思うのだが、そこが違うのかもしれない。
卵(アイデア)を「盗む」というのは敵対的な行為と言えるし、Renzoは自分の考えがマモン(富の悪魔)の手先に植え付けられたものではないかと怯えている。迷路頭がRenzoの頭の中に卵を配置したと考えると、この懸念が当たっているとも考えられる。
商業は芸術を滅ぼしたいわけではなく、芸術を食い物にしたいのだろう。だとしたら育てようとするのも分からないでもない。

ゲーム中の数秘学の本によると9は死を表しているそうなので、あんまり商業と結びつかない気もするのだが。
というわけで、未だ結論出ず。

兄弟たち

ゲーム内の事実

秘密結社のメンバー。第三の目を探している。「赤い獣」にも肯定的。
Lorenzoがこの結社のメンバーであるので、『第三の目』の脚本に彼らについてはそれなりに色々書いてある。
図書室プロトタイプの各所に配置してる本も彼らの物語。ただし、こちらは時代がわからない。
番号や挨拶の〆の文など、ラテン語はこの結社がらみ。Loreleiを「予言されたNocens Mulier(罪人の女)」と呼ぶ。

推測

始祖はおそらく数千年前のスラウェシの洞窟で、第三の目を手に入れ壁画を描いた芸術家。
この芸術家は彼女、she、と一人であることが表現されているが、それらしき人々が複数で表現されていることもある。
(図書室プロトタイプにある本や、『第三の目』脚本中のRenateの台詞)
兄弟姉妹と呼び合うこと、7人であることがはっきりしているので要素は拾いやすい。クイズクラブには25人+ミノタウロスとやたらたくさんいるが。

1963年の出来事の脚本の方ではおそらくRenzo自身が結社メンバーのような振る舞いをし、「Renzoの精神状態が危ない」と言ってきたりする。
(Renzo自身であると明言はされていないが、Loreleiの反応を見る限り知り合いだし、Renzo以外の実在の人物が急に出てくることは考えづらい)
この辺りのRenzoの振る舞いがどこまでパフォーマンスでどこから狂気なのかははっきりしないが、私は狂気だと思っている。
迷路頭と卵の推測でも書いた通り、おそらくRenzoは外的な要因に翻弄されている。元々優れた芸術家であり、かつ不安定な人物ではあったのだろうが、外から植え付けられたアイデアに突き動かされ、キャパシティオーバーを起こしている。

1847年(『第三の目』脚本中)ではメンバーの一人が第三の目にたどり着いたがRenateに怯えて彼女を殺し、隠居宣言をしている。
1963年には上記の通りRenzoに憑依しているだけ。なので現実に存在するのか、誰か動いているのかは分からない。Renzoの妄想だけの存在かもしれない。

一応Renzoが関わってこない独立したストーリーが図書室プロトタイプの本にある物語。
この物語で彼らが探しているのは『第三の目』ではない。神なき世界で、神を再創造するために、赤い獣(の痕跡)を追っている。なんで神の創造に赤い獣が必要なのかはわからない。
痕跡を見つけることはできないのだが、おそらくは仲間の血を使って神を描き、再創造に成功する。なので赤い獣も絵の具にするつもりだったのかもしれない。

結社の目的が第三の目を探すことであることを考えると、第三の目が登場すらしないこっちの物語はやや異質だ。
だが最初の芸術家が自分が描いたものに食い殺されているあたりは、第三の目が登場する他の物語と同じ世界の話のように思える。
また、神を描いた兄弟が最後に自ら盲目になっているのは第三の目を見つけた人と(乱暴に括れば)挙動が同じ。 というわけで、言葉として出てこないだけで、神の創造と第三の目の発見は同じことなのかもしれない。

なお日本語版の第Ⅲ巻では最も歳上の兄弟が再誕しそうな文章になっているが、多分再誕するのは赤い獣である(英語版だと"he")。Ⅵ巻の文章がなんかループしてるのも英語版にはない問題。

赤い獣

ゲーム内の事実

1963の時系列には一切登場しない、純粋な物語上の存在である。
数千年前、最初に第三の目を手に入れた芸術家が赤土の壁画を描いた後に生まれ、その芸術家を貪り食い、混沌と死を撒き散らした。
そして卵も産んでいる。この卵は迷路頭たちによって盗まれ、Renzoに植え付けられ、映画『第三の目』の着想となったと思われる。

1963年の奇術師(たぶんRenzo)は「<赤い獣>に身を委ね、その手を導かせなさい。」と言ってくる。

図書室プロトタイプの本にある物語では探求の対象。

水晶玉で見られる1982年のスラウェシ来訪時には、Loreleiは3つの何かしらの獣の絵(何の獣かはゲームプレイごとにランダム)を発見している。
しかし三匹いそうな描写はない。迷路頭の項目でも書いたが基本的に単数で表現されている。英語版では(読解を間違えていなければ)heやitという三人称が使われる。

「獣」と表現されるものはもう一つ、Teatro Rossoでフクロウ娘が教えてくれる伝説の『最後の夢』にも出てくる。
ただしこちらは赤いとは言われていない。
この獣は第三の目の影に棲んでおり、宝を見つけ出した男女のうち男に取り憑いて彼を喰らった。

推測

抽象的すぎてさっぱりである。何かの概念だろうと思うのだが。
第三の目の力で描かれた壁画なら素晴らしい芸術という位置付けだと思うのだが、だからこそ命を得てしまったのか。
命を得たから暴れ回りました、ということなら、獣というだけあって意志とかはあまりなさそう。ただそれだと、「身を委ね、導かせなさい」のセリフが不可解。導いてくれる前に喰われるでしょ。

ひょっとしたら「壁画から生まれた」という読み取りが間違っているのかもしれない。
芸術が生まれたことによって目を覚ました別の何かなのかもしれない。
そこだけ拾うと商業主義のような気もしなくもないのだが、やっぱり「身を委ね、導かせなさい」がわからなくなる。

「身を委ね、導かせなさい」と言っているのは(おそらく)Renzoであり、そのRenzoは外からアイデアを植え付けられておかしくなっている状態。
迷路頭がマモンの手下であるのなら、本来はマモン側である赤い獣を芸術側であるかのように言わされている、のかもしれない…?
それなら整合性は取れるような気がするが、推測の土台に推測を乗せることになるので、自説として推すほどの自信は持てない。

第三の目

ゲーム内の事実

Renzoが生涯最高傑作にすると息巻いていた映画のタイトルであり、みんなが探してるやつ。手にするとこの世の魔法が見える。
占星術の本によると天体。彗星のようなイメージなのか、近づいてくると芸術家の時代が来る。
数千年前までは極東の空に輝いていたが、地に堕ち、その後行方不明になった。「目が閉じた」とも表現される。

繰り返し探されるが、見つけた人は大抵最後には自分の両目を抉り出してしまう。唯一の例外はフクロウ娘の話の『最後の夢』に出てくる男女。男の方は食われるが女は無事。

スパコンOCU-3にログインするとフクロウ娘に「第三の目は開かれた」と言われる。

OCU-3はホテルが再開発される際に発見され、個人の手に渡ってデータが復元されている。このデータはネットに公開されて「1960年代の技術水準でここまでのことが可能なのか?レトロ風に作られた対話型マシーンなのでは?」と疑問を抱かれた。

推測

ゲーム中ではOCU-3(上述の占星術の本にはTertius OculusとあるのでOCUもそのまんま目のことだろう)がそのまま第三の目扱い。丸いモニタあるしね。
このスパコンはLoreleiが迷路のデザインのために持ち込んだもので(イカサマで賭博に大勝ちした財源があるとはいえエグい投資だったろうなと思う)、Renzoによる初期化の後に再入力されたかで入っているデータがあったとしてもやはり迷路だろう。おそらくは最後の真実シークエンスで歩くような空間。対話型マシーンの意味はちょっとわからないけど、入力値によって道が開ける作りのことだろうか。

当然だがスパコンは空で瞬かないしそもそも数千年前にはない。なので伝説上の第三の目とは別物。
第三の目の役割をOCU-3がしているのかというと、ゲーム中で見せてくれたのはLoreleiのごく個人的な記憶であって、この世の魔法とか神とかではない。
Loreleiにとって一番見たいものを見せてくれた、のかもしれないが。

名前がついたもう一つのもの、映画『第三の目』の方は、マニフェストにある通り見せるためのものではない。
実際完成しなかったわけだが、おそらくは制作過程含め、作品を作ることそのものが芸術だったのだろう。
それがRenzo自身の考えではなかった可能性はあるにせよ、Renzoにとっては映画『第三の目』がTertius Oculusと同様に芸術家の時代をもたらすものだったのかもしれない。映画のテーマが第三の目なんじゃなくて映画そのものが第三の目。
Renzoはこの世の魔法を見せてもらえたのだろうか。

具体的な機械や作品があるようで、概念はよくわからない。
まあOuter Wildsの宇宙の眼然り、TunicのThe eyes of far shore然り、洋ゲーの「目」は掴みづらいことが多い。意志があるんだかないんだかよくわからないけどなんかすごいやつ。
記事タイトルにしておいて何なのだが本当にわかってない。感覚的にすら、なんでそういうものにeyeとつけるのかわからない。宗教観とか文化とかのベースが違うせいもあるのかもしれない。

おまけ:その他気になることなど

  • Renateの父親が迷路で見た「おぞましいもの」がなんだったのかわからない。第三の目で素晴らしいものを見たのではないの?
  • フクロウ娘の話す「ある男の探求」が誰のことなのかが全くわからない。ちなみにこの伝説の専用BGMがめちゃくちゃ優しくて好き。
  • 「最後の夢」も説明がつけられてない。英語版で確認したら老いた芸術家はsheと呼ばれていたので老Loreleiのことに間違いはなさそうなんだけど。
  • 1982年のスラウェシで何があったのかずっと気になってるんだけどとうとう情報出てこなかった。どうもLoreleiがそこで行方不明になったと思っている人も多いようで。
  • 所持品欄のコメントでしょっちゅう「売ったら高そう」を気にしていたの、あれはLoreleiのコメントなんだろうか。マモンに毒されてる人がいます。
  • 結局タンポンはなんだったのか分かっていない。1963年の事件当時Loreleiが月経中だったとしても、それが特に何かつながりそうな気もしない。